「夕づる集会」

☆一人一人が主役

 加茂小学校には、今年(令和元年度)で36回目を迎える「夕づる集会」があります。これは、佐渡市北片辺に伝わる「鶴の恩返し」という昔話が原点になっている全校児童によるオペレッタです。昭和59年の第1回公演以来、特色ある教育活動として受け継がれ、今では「加茂小学校といえば夕づる集会」と言われるほど伝統的かつ代表的な行事として定着しています。

 作品の登場人物「つう」と「与ひょう」は,6年生全員参加によるオーディションで決まります。1年生は、「つう」と一緒にかごめかごめで遊ぶ子ども役です。でも、出演者はそれだけではありません。あいさつ・ナレーター・合奏・合唱も全校児童が演じ、さらに、照明・大道具・舞台装置の操作など、公演にかかわるすべての仕事を子どもたちだけで行うのです。すなわち、一人一人が主役となる「夕づる集会」なのです。

 10月始めにオーディションが行われ、一人一人の役割が決まり、練習が始まります。夕づる集会が近づくと、オペレッタ「夕づる集会」のメロディーが校内のあちらこちらから聞こえてきます。

♪「とんとんからり とんからり」♪「じいやんにきせる ふとぬうの」♪「とんとんとん こんばんは」♪「おらのうちはこのとおり」♪「かごめ かごめだよ」♪

 朝の会、昼休み、放課後と、子どもたちは時間を見つけては練習を繰り返し、日に日に上手になっていきます。

 当日は、150名前後の保護者・来賓・地域の方々が見守る中、全校児童で作り上げた「夕づる集会」を上演します。

 夕づる集会は加茂小学校の誇りであり、地域の財産でもあり、そして6年間演じ続けた子どもたちにとっては、一生の宝物になっているのです。

平成30年度の取り組み
 いろとりどりのチャンチャンコを着た全校名の児童が、加茂小学校の児童会の歌「ドテン山」のリズムにのって体育館に入場してきました。
 これから平成30年度第35回「夕づる集会」の始まりです。ギャラリーには、保護者や地域の方々約150名ほどが、舞台となる体育館のフロアを見下ろしています。子供たちが所定の位置に着くとライトが消され、一瞬静寂に包まれます。どこからか無伴奏のソプラノの澄んだ声で童歌が聞こえてきます。すかさず、声のする方にライトがあたります。

       じやんに着せるふとぬーの 
       ばやんに着せるふとぬーの
       チンカラカン トントントン

        チンカラカンカラ トントントン
 続いて器楽隊の前奏が入り、今度は、全員がその歌詞を繰り返します。その時には、体育館はもう昔話の世界にと変わっています。そして、やがて中央に「つう」が現れます。
 
 毎年、冬になると行われる加茂小学校の「夕づる集会」は今年で36回目を迎えました。昭和59年、新潟県小学校教育研究会から、音楽教育研究校の指定を受けた際、情操豊かな子供を育てるために、音楽の果たす役割は大きいとの考えから音楽集会を計画、加茂小学校の「夕づる集会」が生まれたのでした。

 今まで何百人、いや、千人以上かもしれません。「夕づる集会」の思い出を胸に加茂小学校を巣立っていきました。
 今回も十数名の中学生が見に来てくれました。心の中で後輩達と一緒になって「つう」や「与ひょう」を演じ、童歌を口ずさみながら小学校時代の純真な気持ちに立ち返っているのではないでしょうか。「なつかしいなあ」とぽつりと言って会場を後にした男子生徒のおだやかな表情が印象的でした。
「夕づる集会」10周年記念誌より
 「子供たちは、それぞれが生まれた土地で過ごし、様々な経験を経て成長する。その過程は、生まれ育った地域や社会と切り離しては考えられない。したがって、子供が豊かでたくましい心をもち、すべての人々を愛するようになるためには、まず、身近な人々や土地との触れあいにおいて愛することの意味を知り、愛する行為を身に付けていくことが基本となる。
 郷土の美しい自然や優れた文化、芸能、先人の苦労や偉業等に直接触れながら学ぶことを通して、郷土を大切にし、もっとすばらしいものにしたいという願いに高められていく。地域社会の一員としての所属感や連帯感も芽生えてくる。佐渡の子供たちの多くは、成人して佐渡を離れ、いろいろな土地で暮らすことになろう。加茂小学校の子供たちも例外ではない。しかし、その土地のすばらしさを知り、先人の成し遂げた多くの困難を学んだ子どもたちは、必ずやそれぞれが生活する土地でその土地を愛し、よりよくするために励んでくれるものと信じている。そして、加茂小学校の子供たちが「つう」の心を持ち続けることを願いながら、今年もまたオペレッタ「夕づる」の成功のために、努力しようと考えている」